藤木(以下藤) 平山さんって、こういうインタビューみたいなのって受けたことあるんですか?
平山(以下平) 初めて初めて。美術について語ったこと全くない。しかもこれ記録に残るから結構緊張してる。
佐藤(以下佐) まあでも、これ文字起こして、確認してもらいますからね。
平 あ、よかった、こっちで判断できるんですね。藤木さんに独断で作為的な感じにされるのかと。
佐 いや全然全然、だから師匠の悪口とか言ってもらって。
藤 ううん、使えないのは最初からバッサリ切ります。
-----2人の出会いは?
佐 アナログスイッチはずっと自分たちで美術作ってたけど、俺が美術家入れたいなと思ったときに、鴻上さんに相談したら、稽古場でね。あれ何の稽古場だっけ?
平 えっとね、KOKAMI@network(鴻上尚史による演劇プロデュースユニット)の。
佐 あー、『キフシャム国の冒険』だ。でそこで相談してたら、鴻上さんいつも松井るみさんが美術家で入ってて、大美術家ですよ、平山さんの師匠のね、がちょうど稽古場にいた時なんだよね。
平 うん。
佐 そしたら鴻上さんがるみさんの弟子として稽古場に来てた平山さんに『こいつ美術家探してるからちょうどいいだろう、ちょっとお前やってやれよ』って言ってくれて、あ、じゃあ、んー、ちょっと太ってるからやだなあと思ったんですけど、まあ、いいかと思って。
平 その頃はそこまで太ってなかったですよ。
藤 (笑)
平 今マックスだから。
藤 (笑)
佐 まあでも、俺が鴻上さんの下で勉強してて、で松井るみさんの弟子と、こう弟子同士で繋がったのは、面白かったなって。
-----同世代の2人
平 鴻上さんが仲介って、今思えば凄いなって。で、あれですよね、えっと歳が、あれ何年生まれ?89?
佐 俺89年生まれ。
平 ですよね、で(自分が)90だから、ほんとに同世代で、でそういうなんか、鴻上さんの現場って、すごい大人の人ばっかりだから。
佐 そうそうそう。
平 その中で同世代がいるって、凄い安心感あったし、うんなんか、それで喜んでって感じで受けたね。
----初対面の印象とかは?
佐 んー、でも俺、鴻上さんの演助の時は必死すぎて、正直覚えてない。もちろん深く関わった人の事は覚えてるけど、平山さんその時アシスタントだから、そんな話す機会もないというか。
平 うん。
佐 俺もその時、演助の演助みたいな感じだし。
平 そこで直接、鴻上さんの演目についてのやりとりとかは、もちろんないから、でこっちもこっちで必死すぎて全然印象にない。
藤 えー、どっちも覚えてない。
平 で、もっと言うとアナログスイッチでの1本目の仕事の初めての打ち合わせも覚えてない(笑)
佐 あ、俺も覚えてないな!
藤 えー。
佐 全然覚えてない!
----アナログスイッチの美術をずっとやってきて変わったこと
平 あー、なんか、言うと、自分が美術家を始めた最初の頃からアナログスイッチとご一緒させてもらってるから、なんか、特にそれで変わったとかは、正直言うと無いかもしれないですけど、でも、なんか、なんだろ、凄い、なんだろ、典型的な考え方で、その、アナログスイッチはワンシチュエーションだから、その、1個その、具体的な、リアルな空間を1個、作ればいいっていう風に、言ったら映画のセットみたいなのをどんと作ればいいって、当初は思ってたし、その、ん、あれめっちゃ笑ってる?
藤 いや、ごめんなさい、その説明しながら、身振り手振りが多くなって、手でマイクおさえるのやめてもらっていいですか?(笑)
佐 いや、僕ね、これちょっと嬉しいんですけど、平山正太郎は東大中退で、まあ頭の回転もいいし、普段取り乱さないんですけど、こんな緊張してる平山正太郎を見れるなんて。
一同 (笑)
藤 やっぱずっと変だよね!
平 ちょっとすいません、1回コーヒー飲みますね。
藤 もう一度聞いてもいいですか?(笑)
----やっと力の抜けた平山さん
平 えっと、リアルなのを1個作ればいいと思っていたのが、最近なんか、いい感じに力が抜けてきたっていうか、必ずしも全部、映画のセットみたいに作らなくていいんだっていう。
藤 例えば最近で言うとどういうところにその感じが出てるんですか?
平 まあ『バンブー・サマー』(アナログスイッチ第14回公演)からだと思うんですけど、今までだったら、教室の壁を建てるにしても、壁の質感とか、学校ならコンクリートに塗ってる壁みたいに、モノから全部丁寧に作らなきゃいけないと思ってたのが、そうじゃなくて、アナログスイッチって、ちょっとリアルから飛んでる世界観って絶対あるから、それとリンクさせてセットも絵のタッチにしたり、『かっぱのディッシュ!』(第15回公演)では切り絵タッチにしたりみたいに、表現方法を遊んでいいんだって思うようになったのは最近凄い発見だったし、アナログスイッチで初めて気付いた事ですね。
藤 そのあと別の現場でも生かされてるんですか?
平 うん、そのあとお絵かきシリーズだったりやったりしているので。
藤 ウケはいいんですか?
平 ウケはねなんか、大体可愛いって言われる
藤 あー、いい!だいぶ力抜けてきましたね!こういう状態で聞きたかった!
----佐藤さんは平山さんに頼み続けて変わった?
佐 まあK○RINの飲み物をよく飲むようになったことと。
平 これ分かるかなー?(笑)
藤 ん?
(写真を撮ってくれていた劇団員の木幡雄太が)
木 多分平山さんの奥さんがK○RINに勤めていらっしゃって。
平 これ語注が付くんじゃないですか?
一同 (笑)
----改めて
佐 いや、なんかね、何が変わったていうよりは、他の同世代のスタッフとか、音楽をお願いしてる福永健人(第5回公演からアナログスイッチの劇伴を担当)とか、公演終わって、みんなバラバラになるじゃないですか、でまた公演やるってなって、一緒にやると、なんていうか、自分も含めて、あ、ちょっと成長しているというか、前よりお互い力ついてるなって感触がある感じが、嬉しいっていうか、心地いい。
平 うんうん。
佐 それはなんか、ずっと一緒にやってきたからこそ感じるというか。
平 なんかお互いどんどん引き出しが増えて行ってる感じがする。
佐 お互い外の現場で学んできたんだなとか、凄い励みにもなる。
藤 あー、いいの出たね!
----アナログスイッチとも同世代
平 やっぱ世代がほぼ一緒てのがでかいんじゃないですかね、他の現場とか、自分が美術でついてるとことか、これだけ同世代が揃っている現場ってまず無いから、やっぱりなんか特別ですよね。その成長とかも、なんだろ、その等身大で、自分が成長した分、相手が成長してるってのもはっきり分かるし。
藤 確かに、やっぱり同い年現場にいるとテンション上がったりするもんなあ。
平 藤木さん確か僕の1個下。
藤 そうですそうです、
----前回からの美術の変更点
藤 初演はまた別の美術家さんでしたが、何か変わった点とかありますか?
佐 これ難しいのよ、1回5月の公演が中止になってて(今年5月の公演)、要は初演、再演(5月)再々演(今公演)みたいになってるのよ。それで美術打ち合わせは再演の時にもやってて。
平 もうデザイン固まったとこまでいってましたもんね。
佐 そう、それで中止になって、更にそこから打ち合わせを重ねて今回の美術になってるのよ、うん、ね、ちょっとそこら辺を、平山正太郎が。
平 え(笑)
藤 なにその導入。
平 そうですね、初演も楽しく観させてもらって、あのセット自体は凄い好きで、それこそアナログスイッチ中期までやってた、アナログスイッチのちゃんと部屋を作るっていう、シアター711最大限使ってるなっていう感じがして。それでまず今回は、再演、再々演と駅前劇場になって、出来ることも幅広がるし、どういうことやってやろうかっていうのは当初から佐藤さんと話してて。で前回の駅前劇場では『バンブー・サマー』の時にパネルを倒すやつやったのが、結構お気に召していて。
藤 佐藤さん、王様かなんかですか?
平 平山こういうことできるんだって(笑)だから今回もなんか仕掛けてやろうっていうのはありまして。で、再演は再演で1個大仕掛けみたいのがあったんですけど、でもそれがコロナ禍を経て、なんだろう、綺麗事言っても制約はでてきてるから、じゃあその中で何ができるかっていうのを、コンパクト版と言いつつも、また違う効果が色々あげられるねっていうのが話し合っていくうちに出てきて。
佐 再演から大分削ぎ落とした。
平 あとは、これはアナログスイッチで初めてやることなんですけど、心象風景っていうか、例えば今までは家だったら家、教室だったら教室っていう、まずその箱を作る、それでおしまいってこともあるし。みたいなセットだったのが、今回は台本を読んで、凄いなんか掘り下げられるなっていうのを思ったし、あとは演出の仕方によって、例えば登場人物が家についてどう思っているのかっていうのを、セットでもビジュアル的に表現できないかっていう。
藤 なるほど。
平 そういう心理描写をセットでも表現するって、今までアナログスイッチでやったことなかったと思うので、それが初めてこの再々演verで出来てる気がする。
----そういう美術案がどういうタイミングで閃いたの?
平 閃くっていうか、凄い話し合って。それこそセットと関係ない事、台本を読んでどう思ったかっていう。なんだろ、凄いやたら褒めちゃうけど、本を読んだ時にこの台本自体が何を言いたいのかみたいなのが、初演で見た時と、再演で読んだ時で違ってて、ていうのも自分も歳をとって、実家に対する考え方が変わったり、結婚したってのもあるし、じゃあこれって改めてどういう話なんだろうねっていうのを一からディスカッションしていくっていう。そこがまずあって、そこからセットでは何を表現しようかって話に繋がるから、結構その仕掛け1個考えるのにもそういう話を積み重ねて。
藤 じゃあ佐藤さん的にも美術打ち合わせをかなりやってて、それが結構もう一度この話を見返す機会にもなったんだ。
佐 ああ、それはもちろん。再演だからこそ演出まわりを前より時間かけて考えられるってのはあるし、話してる中で自分でも気付いてなかったことに、改めて気付かされるってのはある。
----削ぎ落としたい
藤 じゃあ閃いたっていうよりは、何度も話し合いを重ねてたどり着いた感じなんですね。
佐 でも、なんか俺、ある時点で急に削ぎ落としたいって言ったんですよね、なんでだっけ。
平 あれじゃないですか、再々演バージョンで建て込みも減らさないとねってこともあり。
佐 うん。それと何を見せたいかっていうのが打合せ重ねるごとに明白になってきて、そこまでモノがなくても見せられるんじゃないかと思って、だったら削った方が、より伝わりやすいのではっていう結論に至って今回の美術になってると。まあ演出家として当たり前の事言ってる気がするけど。
藤 いつも打合せの始まりはそんな感じで作品を理解するところからなんですか?
佐 始まりはだいたいお互い弄り合うところから。
平 うん、だからまず何を食べるかから始まって。
佐 パフェ食うか。
平 食べないか。
----打合せの場所
平 やっぱ打合せする場所とかって大事ですからね、やっぱファミレスで話するより、ちょっとおしゃれなカフェとかで、美味しいパンケーキつつきながら。
藤 やっぱパンケーキ大事ですか?
平 食べ物っていうか、場所ですね、結構真面目に打合せのロケーション気にするんですけど、食べ物より場所の雰囲気!
佐 最初マックだったのよ、あそこは打合せするところじゃない。その後グレードアップしたけど。
平・佐 ガスト。
藤 (笑)
佐 ほんとは“さぼうる(神保町にあるカフェ)”みたいなカフェがいいのよ。
平 アンティークなカフェみたいなとことか。
----コロナ禍での打合せ
平 あとは再々演verになってからは結構リモートで打ち合わせになって。
藤 どうだったんですか、リモートでの美術打ち合わせは。
平 なんか気兼ねなく夜遅くとか打合せできて頻繁に話が出来てよかったです。美術って普段は模型作って、生で模型見てもらってで、それが出来ないのは不便だなとは思い、今回の打ち合わせは模型作んないでphotoshopで3Dの模型を立ち上げて、プレゼンした。
佐 うん。
平 逆に模型の写真に近い形でプレゼン出来るなと思って、そしたら佐藤さんが梁のここちょっと5mm短くした画を見てみたいって。
佐 いやこれねzoomでも話したんだけど、リモートでやってるとそのまま図面をいじれちゃう。で、模型で持ってこられるとなかなか変更できないから。いいのか悪いのか分からないけど。
藤 リモートでの打合せって疲れない?
平 うーん。
佐 長くなってもそれなりに耐えられる人と耐えられない人がいると思うけどね。
平 ああ、うん。
佐 まあ、冗談とか世間話とかしつつやってるからねえ。
藤 もう本題の結論出ないのに、もうないか?ほかないか?みたいな競りみたいな人いない?
佐 それ俺じゃん。
平 (笑)
藤 まあでもそれで言うと、平山さんは叩けば何か出てくるから、打てば響くというか、だからなんかないの?とかにならなくて、だったらこうだよね、そしたらこれの方が面白くない?みたいになるから。
平 そうですね、それの方がプレッシャーなく考えられるし、あと一回不思議だったのが、佐藤さんが真面目な話してるんですよ、佐藤さん一人で、それ話してる間にあの関係なくアイディアが浮かんできて、佐藤さんの話全然。
藤 聞いてない?(笑)
佐 だからノイズがあるってことよ、ノイズがある方がアイディア浮かびやすいのよ。
藤 音楽聞きながら見たいなこと?
平 そうそう、BGM(笑)
藤 (笑)
平 大刀さん(舞台監督)と話してるときも、佐藤さんが一人で話してる横で二人で話して、結構アイディア出てきました。
----打合せ秘話
藤 結構平山さんと佐藤さんは相性いい感じだ。
佐 どうなんだろうね、身体のって事でしょ?
藤 そっちが聞きたい。
平 でも僕、お風呂覗かれましたからね。
藤 え?
平 今回じゃないけど美術打ち合わせで佐藤家でやるってなって、結構夜遅くて、で打ち合わせ終わった後に、終電ないから、うち泊まっていってくださいみたいに。
佐 泊まっていってください?そんな言い方したかな(笑)
藤 風呂見たい感じになってるじゃん。
佐 泊っていったらいいっすよくらいでしょ。
平 でお風呂入ってたら、蛇口こっちですよ、とか他愛もない話しにいちいちガチャっと開けてきて。
藤 あー、あるある。
佐 いやいや、だいたい家に来た人は、だいたい開けてるから、平山さんが特別ってわけじゃないからね?
藤 あと全裸で入ってこなかった?
佐 あれそれ藤木にやったっけ?あ、こわちゃん(木幡さん)家でやったのか。
木 そうそう(笑)
佐 友達が入ってるところに、全裸で『湯加減どう?』って入っていった、昔はね?
藤 脱ぎたがりだもんね。
佐 違う違う、困ってるのが見たいのよ。
藤 (笑)
----舞台上で写真撮ること
藤 アナログスイッチは終演後、舞台上にお客さんも上がってよしにして、写真も撮っていいよってしてるじゃないですか?あれどうなんですか?
平 あー、あれ僕凄い嬉しくて。
藤 あ、そうなんですか!あれってうちくらいでしか見ない気がしてて。
平 結構twitterとかでアナログスイッチって検索かけてみてるくらいなんですよ。
藤 へー。
平 なんかアナログスイッチのあの世界観で、あのセットで普通にお客さんが写真撮ってるのが、凄い特別感あって、僕は凄い好きだし。
藤 うんうん。
平 あとお客さんによって『バンブー・サマー』とかだったら細かい掲示板の写真撮ってたり、机の中はどうなってるんだろうって写真撮ってたり、あと黒板の方で撮るとか、椅子に座って撮るとか、お気に入りの場所をそれぞれお客さんが見つけてくれて、そういうのは凄い嬉しい。
藤 うんうん、僕らも、へーそこ気になってたんだ!って面白い。
平 そうそう。
藤 今回はご時世的に難しいなとは思ってます。
平 あー、まじかあ。
藤 でもね、またお客さんも上がれる時が来たらね。
平 うん、大々的にね、力入れて、たくさん電話番号書きますよ!
藤 それが一番聞きたかった、舞台上に僕の電話番号書くのなんでなんですか?
平 あれなんでなんでしょう。
藤 1回普通にtwitterにあがってましたからね!(笑)
平 (笑)
----今後2人で、アナログでやってみたい美術は
藤 どういうの?
佐 あー、申し訳ないけど、作品によるからな。
平 (笑)
佐 でも例えば雨とか、水を使いたい、なんかそういうもので遊べたら面白いと思うね。
藤 平山さんは?
平 これっていうのはないですけど、仕掛けみたいな、それこそパネルが倒れたりだとか、何かが降ったりだとか、日本の舞台で言う外連みたいなの、ミュージカルとか、歌舞伎でどっちかというとやるんですけど、アナログスイッチでもそれはやっていいと思うから。
佐 あー、確かにね、俺もできると思ってなかったからね。
平 うん。なんかそういうことにチャレンジしていきたい。
藤 あーなるほどね。
平 それでお客さんをびっくりさせるのでもいいし、感動させるのでもいいし。
佐 なるほどなるほど。
藤 ほー。
平 水もそういう事かも知れないですね。
藤 じゃあ本日以上です!長い時間、有難うございました!次からは打合せは。
佐 さぼうるで。
平 はい、さぼうる分かんないんだよなあ。
藤 え(笑)